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<<   作成日時 : 2011/05/04 10:08   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0




脱化石に自然エネルギーはどこまで頼れるか「エネルギー問題に発言する会」伊藤 睦



福島第一原発の災害も落ち着いて来たので、災害直前に某技術協会の機関誌向けに寄稿し掲載直前に中止となった、私の論文を披露する。
内容は「日本のエネルギー問題を解決し安全確保として、化石エネルギー依存から脱却すべきであり、そのためには自然エネルギーの活用も大切だがその利用には限度があり、基幹エネルギー源とは成りえず、原子力の活用は避けて通れない。また、スマートグリッドは太陽光発電や水素燃料コジェネあるいは電気自動車など分散電源の利用の拡大内に伴って必要となる、次世代の電力網であるが、日本独自の方式としてのマイクログリッドは太陽光発電とは切り離して慎重に開発すべきである。」とした。しかしその前提である、原子力の安全性に疑問が出て原子力も拡大が難くなったので機関誌への掲載は時期的に良くないという理由で中止となった。
せっかくのであるので、ここに開示することにした。
以下に添付付する。
1.はじめに
最近世界は地球温暖化防止対応として
低炭素社会を目指して、二酸化炭素を排
出しない自然エネルギーや原子力発電の
開発が急速に進んでいる。
我が国でも昨年の洞爺湖サミットでの
「クールアース50」の提案などで、自然
エネルギー開発が注目された。総合資源
エネルギー調査会新エネルギー部会で、
太陽光社会を世界に先駆けて構築しよう
といろいろな政策が検討され実行に移さ
れている。
特に今年になって、補正予算(緊急経
済対策予算)にて高効率自動車や自然エ
ネルギー発電に対する補助制度を強化する政策
でその実現を加速している。これを各メディア
が一斉に取り上げて報道するので、国民は自然
エネルギーの開発だけでエネルギー問題は解決
出来るものと思ってしまう。
このような世の風潮に流されず、もう一度日
本のエネルギー問題を我が国が生きていくため
に必要なエネルギーの安全確保(自給率改善)
という原点に立ち返って考察してみることが必
要だと思われる。
そして自然エネルギーだけで化石エネルギー
の代替を期待することの限界と、原子力エネル
ギーがその代替えの主役であることを理解して
頂くと共に、関係者の奮起を促したい。
2.エネルギー安全保障は国家戦略
日本のエネルギー自給率の現状は、原子力を
入れても20%に満たない(図1参照)。
景気後退前に石油の価格が140$ /バレルを
超えた事実を見ても、石油は世界で奪い合いが
始まっており、お金を出しても容易には入手で
きなくなっている。石炭は今のところまだまだ
枯渇するような状況ではないが、これを燃やす
と二酸化炭素が大量に発生するので使い難いし、
それも海外依存である。天然ガスもほとんど輸
入であり、パイプラインが出来てもその根本で
管理されてしまうので安心できない。
日本が第2 次世界大戦に参戦したのは、石油
エネルギー資源の確保のためであり、また負け
たのも彼我の保有する圧倒的なエネルギーの差
2 電気管理技術2009年8月号
図1 我が国のエネルギー自給率の推移
脱化石に自然エネルギーはどこまで頼れるか
「エネルギー問題に発言する会」伊藤 睦
も一因であったことを思い出してほしい。
政府は平成18年5月に「新・国家エネルギー
戦略」を策定し閣議決定した。その目的は、エ
ネルギー安定・安全供給の確保と自給率の向上
で、具体的には2030 年までに達成すべき、次
の5つの戦略数値目標を示した。
@省エネルギー目標:(少なくとも更に30%以
上の効率改善)
A石油依存度低減目標:(40%を下回る水準を
目指す)
B運輸エネルギーの脱石油:(石油依存度を80%
程度とすることを目指す)
C原子力発電目標:(原子力発電比率35 %〜
40%以上にすることを目指す)
D海外資源開発目標:(40%を目指す)
この戦略は、2007年3月に改定されたエネル
ギー基本計画の「安定供給確保」、「環境への適
合」及び「市場原理の活用」の3 つの方針に沿
って2030 年に達成すべき目標を示したもので
ある。地球温暖化対策のためのエネルギー戦略
ではなく、我が国のエネルギー安全保障として
の自給率改善に向けての脱化石エネルギーの国
家戦略だった。それは自ずと地球温暖化対策に
も繋がるのである。(本誌の2006年12月号で、
私はこの新国家エネルギー戦略を紹介し、我が
国の持続的発展の道として「脱化石エネルギー
社会」を提案した)。
この「新・国家エネルギー戦略」をベースに
「長期エネルギー需給見通し」が、昨年5月に総
合資源エネルギー調査会需給部会でまとめられ
公表された。これによると、2030年の最大導入
ケースで、水力と新エネルギー(太陽光、風力、
廃棄物とバイオ発電、バイオ熱利用、などが入
る。)は1次エネルギー供給の11%である(図2
参照)。
最大導入ケースとは、需要面ではエネルギー
の消費の30 %改善を目指す政策(実用段階に
有る最先端技術で、高コストではあるが省エネ
ルギーの格段向上が期待される機器設備につい
て、国民や企業に対して更新を法的に強制する
一歩手前のギリギリの政策を講じ最大限普及さ
せる。)をとり、新エネルギーについても相当
の規制による義務化を強いて太陽光エネルギー
の導入量を現状の約40 倍(1,300 万kL石油相
当)にするという極めて大きなものである。
これは新築持家の8 割と産業用・公共用施設
全体の8 割に太陽光発電が設置されている太陽
光社会の状態に相当するという。
原子力については2005 年度の実績3,048 億
kWhに計画中の9 基の新設と稼働率80 %から
90%へ改善を加えて4,374億kWhで1次エネル
ギーの19%を担うと見通している。
このケースでも自然エネルギーに原子力を加
えた自給率は約30 %で、まだ依然として輸入
化石エネルギーの割合は70%強である。
一方、内閣府の中期目標検討委員会が取り纏
め、この5月に国民のコメントを求めた「地球温
暖化対策の中期目標」では、この中期見通しを
達成すれば、2050年には90年比−60〜−80%
のCO2排出量の削減が出来きると見通してるが、
その筋道は明確ではない。
我が国が世界の規範となって太陽光社会を実
電気管理技術2009年8月号3
図2 長期需給見通し再生可能エネの導入
現して見せることは大変結構な事だが、それで
も自然エネルギーは我が国の一次エネルギーの
10%程度で、エネルギーセキュリティとして化
石資エネルギーを代替して自給率を改善するこ
ととは殆ど関係無いのである。
我が国のエネルギーセキュリティのために脱
化石エネルギーを進め一次エネルギーの自給率
を50 %以上にすることは、即低炭素社会に繋
がる。その為には、長期エネルギー需給見通し
で70 %の化石エネルギーからさらに20 %(約
100 百万kL 石油相当)を、非化石エネルギー
である原子力と自然エネルギーで担わなければ
ならないことを認識する事が肝要である。
3.自然エネルギーの実力と限界
では自然エネルギーだけで、その代替が可能
だろうか。
自然エネルギーは無限であり温室効果ガス
(Greenhouse Gas:GHG)の二酸化炭素を排出
しない究極のクリーンエネルギーで、分散電源
として地産地消に繋がるなどの特徴を生かして
その利用拡大を図ることに異論はない。ただ、
どんなに頑張っても、自然エネルギーだけで化
石エネルギーの代替となる実力は無いことをし
っかり認識しておかねばならない。
その限界とは@量の限界Aコストの限界B質
の限界である。
@量の限界は用地の限界である。
風力にしろ、太陽光(熱)にしろ、そのエネ
ルギー密度が非常に小さくそれを集めて大きな
エネルギーにするためには、膨大な土地面積が
必要である(表1参照)。
特に日本はその地勢上の特徴として、急峻な
山岳地帯が多く、平坦な場所が少ない。
また海岸も遠浅の場所が少ない。無理に開拓
すれば美しい日本の景観が奪われ逆に地球に悪
いエネルギーとなってしまう。
表2に「NEDOの新エネルギー関連データ17
年度版」を基に概算した太陽光、風力エネルギ
ーが技術的に期待される資源量と内閣府の「中
長期エネルギー需給見通し」で提示された最大
導入ケースの値を示す。
技術的な期待値をとっても、我が国の一次エ
ネルギーの15 %であり、中長期の需給予想の
最大でも3%程度である。
Aコスト競争力の限界
自然エネルギーは、原理的にエネルギー密度
が低いので、それを収集するためのコストがか
かる。現在の太陽光発電の場合3.5kWの太陽パ
4 電気管理技術2009年8月号
太陽光 風 力
発電コスト 46円/kWh
100万kW級原子力発電所1基分を代替する場合
必要な
敷地面積
設備利用率
[大規模]
・10〜14円/kWh
[中小規模]
・18〜24円/kWh
・約67km2
 山手線の内側面積
 (約70km2)とほぼ同じ
・約246km2
 山手線の内側面積
 (約70km2)の約3.5倍
・12% ・20%
出典:資源エネルギー庁「原子力立国計画」(2006年8月)
総合資源エネルギー調査会 新エネルギー部会報告書(2001年6月)
表2 太陽光、風力発電資源量と導入目標量
表1 風力、太陽光発電の現状
ネルとそのシステムは合計で300万円程度と言
われている。これでは1kW当たり、86 万円す
ることになり、原子力発電の建設単価に比べて
倍以上の開きがある(表1、表3参照)。
また、1kWのエネルギーを得るのに現状の電
池システムでは0.5kWのエネルギーが必要と評
価されており、所謂エネルギー収支比(Energy
Profit Ratio:EPR)は2程度であり、経済的な
電源とは言えない。
因みに風力は4程度、原子力は17程度である
(図3参照)。
今後普及が進んで大量生産になればコストは
下がると言われるが、すでに下げ止まり始めて
おり(図4 参照)これ以上の低減には、エネル
ギー変換効率の抜本的な改善に繋がるブレーク
スルー技術の開発が待たれる。
長期需給見通しでは、3 〜 5 年後にシステム
価格の半減を目指し、新方式の電地で変換効率
が20%程度に改善され2030年の発電コストは、
7円/kWhと原発並みになると見通しているが
果たしてそのように成るか疑問である。
風力では風車の大型化がコスト低減への方策
であろう。既に、1 基で1 万kWの設備容量の
風力発電設備が開発されている。
[電気学会誌Vol.129(2009/5)
電気管理技術No.314(2008/8)]
B質の限界
風力も太陽光もそのエネルギーを電力に変換
して使う以外は使いようがない。
昔は風力は風車としてその回転力を直接灌漑
電気管理技術2009年8月号5
図3 各種エネルギ−EPR
図4 住宅用太陽光発電システムの価格推移
1基当たり設備容量 100万kW 300kW 3.5kW 1,000kW
利用率 80% 12% 12% 20%
1基当たり年間発電量 70億kWh 32万kWh 0.37万kWh 175万kWh
1基当たり設備投資額 3,600億円 3億円 300万円 2.5億円
原子力発電 風力発電
太陽光発電
業務用 住宅用
■原子力発電、太陽光発電、風力発電の比較
 出所:総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会資料
太陽光発電の出力変動(春季) 風光発電の出力変動(冬季)
太陽光発電は
時間と天気で
発電量が変わる
風力発電は
風の強さで
発電量が変わる
図5 太陽光、風力発電の出力変動
表3 各種発電の建設コスト比較
用水の汲み上げや穀物の精米用に使っていた。
太陽エネルギーは太陽熱温水器や太陽熱発電と
して直接熱エネルギーとしての利用も可能で
ある。
何れの活用法も効率は良くないが、「お天気
まかせ人か風まかせ」の気ままに変動するエネ
ルギー(図5参照)を上手く使っていた。
この気ままなエネルギーは、分散電源として
地産地消の電灯程度の用途であれば電力として
使えようが、産業の様な大電力でかつ必要な時
に必要な電力を供給する用途には使えない。
そのためには一旦電力を蓄えて置き、必要な
時に送り出すかまたはその地域電力系統内で気
ままな変動を吸収する電源設備が必要になる。
日本の電力系統ではその系統に繋がっている
総電力量の20 %が限界と言われている。これ
に対処する電力系統として、マイクログリッド
やスマートグリッドなどが研究開発されている
が実運用までには時間がかかる。
さらに自然エネルギーは、エネルギー需要の
約半分を占める民生部門や産業部門の熱エネル
ギーとは直接代替できない。
特に風力では電力を、熱エネルギーに変換す
る以外に熱エネルギーを作り出す手段がない。
この様に、自然エネルギーだけで現在使用して
いる化石エネルギーを置き換えることは不可能で
ある。
例え限界まで開発するにしても幾多の困難が
あり、総合資源エネルギー調査会の「長期エネ
ルギー需給見通し」で予測した、新エネルギー
(自然エネルギー)の最大導入ケースで2030年
に風力は269万kLoe、太陽光は1,300万kLoe
が精一杯だろう。
それでも1 次エネルギー供給量(561kLoe)
に占める割合は水力4%を加えても11%程度に
しかならず、依然として、石油、LPG、石炭、
天然ガスなどの輸入化石資源に70%以上依存す
るという構造である(図6参照)。
4.脱化石・低炭素社会実現に向けて
それでは、脱化石エネルギーはどのようにし
たら、実現できるのか。
低炭素社会は昨年7月に閣議決定された2050
年のCO2 排出量が現状比−60〜−80%の社会
であるとすれば、一次エネルギーの化石エネル
ギーの依存度50%以下を目標とする脱化石エネ
ルギー社会がほぼ同様のエネルギー供給構造の
社会と考えられる。
国立環境研・京都大学などで構成された2050
日本低炭素社会シナリオチームがまとめた「2050
日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削
減可能性検討」によれば、シナリオAあるいは
6 電気管理技術2009年8月号
図6 長期需給見通し最大導入ケース2030年1次エ
ネルギーの供給見通し
70%削減を可能とする一次エネルギー供給構成例
図7 2050年の一次エネルギー供給予想
Bでの何れでも70%削減可能でその場合の一次
エネルギー供給構成は図7 のようになると予測
している。
しかし、何れのケースでも化石依存度は50%
を超えており、脱化石エネルギー社会にとは言
い難いが、シナリオBケースに原子力をシナリ
オA(原子力は現状維持)程度導入すれば達成
出来るのである。
一方、今回の「地球温暖化対策の中期目標」
は2050年の長期目標を見据えて2030年の中期
目標を定めており、この目標を達成することで、
2050年の低炭素社会が見えてくるとしている。
その2030年の目標として6つのケースのうち、
第3 のケース、長期需給見通し最大導入ケース
を達成出来たとしても、1 項に述べたようにさ
らに20%(100百万kLoe=4,400億kWh)を
原子力や自然エネルギーなどの非化石エネルギ
ーで賄う必要があり、これを2030年から20年
で実現するには相当の努力が要る。
例えば、130万kWの原子力発電所5基の追加
増設で480億kWh(約10百万kLoeで一次エネ
ルギーの約2 %)のエネルギーが二酸化炭素の
追加放出無しで供給出来る。
その費用は130万kWの原子力発電プラント
5 基で約2 兆円の建設費で済み、国民負担はゼ
ロに近い。むしろ、経済効果として原子力と火
力の発電コスト差分が電気料金引き下げとして
国民に返ってくることになり、国民負担は軽減
される。
一方、この電力量を太陽光や風力で作り出す
ことは我が国の風土と地形からはほぼ不可能で
あるが、仮に業務用300kWの設備で450億kWh
の電力量を得るとすれば、稼働率12%として、
14万基以上作る必要がある。その建設費用は約
36 兆円となり、原発の約18 倍の費用が掛かる
(表3参照)。
家庭用で試算すると3.5kWの設備で発電量は
0.37 万kWhであり、2,430 万戸(我が国の戸
建て住宅の約半分)に設置するエネルギーに相
当する。
この部分は電気料金あるいは税金による補助
として、国民負担が増える事になる。
この様にして発電電力をすべて原子力と水力
を含む新エネルギーで供給したとしても、石炭
の40%、石油の35%を消費している運輸部門
や天然ガスを28%消費している民生用の熱需要
の化石エネルギーなどが残り、化石依存度は容
易に約50%を切らない(図8参照)。
更なる化石エネルギーの削減をするには、運
輸部門の脱石油とともに産業と民生部門の熱エ
ネルギー需要の脱化石を図らなければならない。
これに自然エネルギーで対応するのは不可能
である。これに対応できるのは、原子力の熱エ
ネルギーの活用である。
世界では一部の地域(スイス、ロシア)で地
域暖房として実用しているが、長期的な視点で
この用途に向く高温ガス炉や小型原子炉の実用
化を進めることが重要なことである。
我が国のエネルギー安全保障と低炭素化に向
電気管理技術2009年8月号7
図8 エネルギーの使用用途
けて、化石代替エネルギーを自然エネルギーだ
けに頼るのは限界があり、原子力の活用は避け
て通れない。しかし、その導入拡大には一般国
民の原子力アレルギーの解消、原子力の信頼回
復、高レベル放射性廃棄物処理・処分地の確保
そして世界的な核不拡散態勢の確立などの壁を
超える事が必要である。そして現在稼働中の原
子力発電所の安全・安定運転の積み上げと合わ
せて、これらの問題解決に向けて(官、民)が
一体となって取り組み努力することが求めら
れる。
5.世界の動向
昨今世界は地球温暖化の防止という流れの中、
GHGガスを放出しない再生可能エネルギーの
導入が広まっている。日本は欧州に比べて遅れ
ていると思われがちであるが、再生可能エネル
ギーと言う意味では水力が加わり、図9 に示す
ように実際は欧州と遜色ない数字である。
その中で、自然エネルギーの風力と太陽光発
電についての最近の世界の動向を見てみる。
風力:
GWEC(世界風力エネルギー協議会)によると、
2008年末の世界の風力発電累積導入量は、07年
末から2,705万kW増加して1億2,079万kWと
なった(図10参照)。
08年の1 年間の増加量で見ると、1 位は米国
の836万kW、2 位は中国の630万kW、3 位は
インドの180万kW、4位はドイツの167万kW、
5位はスペインの161万kWだった。
日本は08 年の1 年間に33 万kW増加し、08
年末の累積導入量は188万kWとなった。しか
し累積導入量で世界13 位にとどまり、世界市
場シェアも1.6%に過ぎない。
欧米での市場急拡大に比べると、日本国内で
は風力発電所の建設が伸び悩んでいる。これは、
日本の地形と風況が欧米諸国に比べて悪く、適
地が少ないことと固定費用での買い取り制度な
どの支援政策を導入していないことなどによる
と考えられる。
太陽光:
世界の全太陽光発電設備容量は2008 年には
6.9GW増加して16GWに達した(図11参照)。
2008年の市場の急速な伸びはスペインの市場
の計画外の急拡大によるところが大きく、2009
年はその反動と金融危機によって縮小したのち、
8 電気管理技術2009年8月号
図9 日米欧の再生可能エネルギーの割合図10 世界の風力発電累積設備容量
2011年頃から再び拡大すると予想されている。
因みに世界の原子力発電設備容量は約400GW
で世界の1次エネルギーの6%を担っている。太
陽光発電は設備利用率が20 %程度であるので
1%に満たない。
太陽光や風力発電は、真のクリーンエネルギ
ーとして欧米ではその利用拡大に向けて特段の
優遇政策(固定価格買取制度など)で急速に伸
びている。将来は全発電量の20%を新エネルギ
ー(太陽光、風力)で担うことを目標にしている。
世界的には未利用の土地として広大な砂漠地
帯が残っており、今後とも大幅に開発が進むだ
ろう。しかし海外でも自然エネルギーだけでは、
真の低炭素社会は作れないとの認識から原子力
の活用見直しの動き(ルネッサンス)が始まっ
ている事も事実である。イギリス、スウェーデ
ン、イタリアそしてスイスなどはこれまで脱原
子力政策から一転して原子力の維持、新規発電
所の建設に踏み切った。
6.まとめ
低炭素社会の実現は、我が国の場合には温暖
化対策と言うよりも、エネルギーの安全・安定
供給の確保というセキュリティのための脱化石
エネルギー社会として必要な日本独自のシナリ
オである。
脱化石の化石エルギーの代替は、自然エネル
ルギーと原子力エネルギーである。自然エネル
ギーは、無限で地球に優しいエネルギーであり、
その利用拡大を図るべきであるが、自然エネル
ギーは量的にもコストの上でもまた質の面でも
限界があり、自然エネルギーだけでは大きな量
の化石エネルギーの代替は不可能である。従っ
て原子力エネルギーの活用無くしては、脱化石
エルギー即ち低炭素社会は実現しないといえる。
原子力エネルギーの利用手段として、原子力
発電はすでに世界各国で実用されて、安全性や
経済性も実績が積み上がり、スリーマイル島や
チェルノブイリ事故で沈滞していた開発が欧米
ではクリーンエネルギーとして見直され開発が
復活している。
日本はこれまではその開発を、着実に進めて
きた。そのため、技術的には世界でフランスと
共に世界を二分するほどの技術力を保持してお
り、世界の原子力復活に寄与している。
一方で関係者の不祥事や地震の影響も重なり
我が国の原子力発電の利用率は60 %台で、世
界でも最低のレベルである。さらには再処理施
設のトラブルで、営業開始が遅れている。高速
増殖実験炉「もんじゅ」の再起動も、遅々とし
て進まない。そして高レベル放射性廃棄物の地
層処分場の用地が決らないなどで、原子力に対
する信頼が著しく損なわれている。
そのため一般には、原子力は低炭素社会に向
けて頼りにされなくなり、自然エネルギーに偏
った期待をさせる結果となっている。
今こそ、原子力の関係者は、襟元を正してそ
の信頼回復に努めることを強く要望する。
電気管理技術2009年8月号9
図11 世界の太陽光発電設備容量
10 電気管理技術2009年8月号
伊藤 睦(イトウムツミ)
昭和13年1月1日生まれ秋田県出身
昭和35年東京工業大学電気工学科卒業
平成4年〜6年株式会社東芝原子力事業部長
平成6年〜12年東芝プラント建設株式会社代表取締役社長
「エネルギー問題に発言する会」[EEE会議]「日本原子力学会」「電気学会」会員
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